所蔵枚数1500点以上!「藤沢市藤澤浮世絵館」で漫画の原点に会う!

実は藤沢市は、浮世絵の一大コレクターなんですよ!

「浮世絵」とは、江戸中期から明治・大正にかけて刊行された印刷物(版画)の一分野のこと。
今でいう、本の挿絵や旅のパンフレット、アイドル写真やポケモンカードのような存在です。

そんな浮世絵を藤沢市は、藤沢宿にまつわるものを中心にたくさん所蔵しているだけでなく、辻堂駅から歩いて5分の「藤沢市藤澤浮世絵館」で無料公開しています。

そこには藤沢市の歴史資料としてだけでなく、絵としても面白いものがたくさんありますから、ぜひご紹介したいと思います。

「藤沢市藤澤浮世絵館」は駅から真っ直ぐ一直線

「藤沢市藤澤浮世絵館」は、辻堂駅北口改札を出て、ロータリーの道を真っ直ぐ北へ徒歩5分、「神台公園入り口」信号の先、神台公園を見下ろす「Cocco Terrace(ココテラス)」の7階にあります。

ルートはとてもシンプルですが、看板が控えめ過ぎて分かりにくいのがちょっと残念…。
ですから、目指すのは看板ではなく、「Cocco Terrace」の入り口です。

※もし法務局まで行ってしまったら行き過ぎです。辻堂駅方向、隣のビルまで引き返してくださいね。

いざ浮世絵の展示室へ!

入り口から入って正面のエレベーターで7階へ。扉が開けば、そこが「藤沢市藤澤浮世絵館」です。

案内札に従って左に折れると、左手に事務室兼受付があるので頭を下げてご挨拶。
そしてその先左の入り口をくぐれば、いよいよ展示室の入り口です。

今おこなわれているのは、「江の島浮世絵と富士山 伝説の宝庫~藤沢・江の島~」展。
「藤沢市藤澤浮世絵館」では、メインテーマをもとに、4つのコーナーに分けて展示をおこないます。それを年に6回、会期ごとに絵を総入れ替えをするというのですから驚きです。

順路①「東海道五十三次コーナー」

東海道五十三次コーナーのミニテーマは「富士山を楽しむ 冨士三十六景」です。
ずらりと並んだ歌川広重の「冨士三十六景」は、縮緬絵(ちりめんえ)と呼ばれる明治初期の作品。

順番に見ていくと、ときどき知っている地名が出てきてうれしくなります。
それに、知らない土地でも、下から上へ視線を動かしていくと遠くに富士山が見えてくる。
小さな画面に広がりを感じて、絵の中に引き込まれていきそうです。

さらに、藤沢の絵を探していくと、やはり広重のオススメも江の島からの富士でした。

絶景は今も昔も変わらないようです。
(ちなみに歌川広重は、有名な「東海道五十三次」を描いた人です)

順路②「藤沢宿コーナー」

藤沢市民病院のそばにある白旗神社は、源義経をお祀りする神社ですから、義経と藤沢市には切っても切れない縁があります。

このコーナーでは、夏休み特別企画として、「北崎拓先生原画展『ますらお』✕藤沢市所蔵義経浮世絵」展が開催中です。

壁に北崎先生の原画、その下に関連する浮世絵が並べられていて、北崎先生の義経はうっとりするほど細かく色も美しく、浮世絵の義経は、色こそ少し褪めていますが、これまた繊細ですごいのです。

まさに現代の絵師といにしえの絵師の夢のコラボ展。
写真でご紹介したかったのですが、「特別展のため、写真撮影お断り」ということでした。
とはいえどの絵も義経を、どうやって強く、格好よく、ステキに見せるか考え抜かれたものばかり。また、これを企画した学芸員さんも、正直すごいと思いました。

③「江の島コーナー」

江の島コーナーの今期の企画は、「江の島伝説と富士山」です。

江の島からは富士がよく見えますし、江の島の岩屋と富士宮市の人穴とが、つながっているという伝説もあるくらいですから、藤沢市は富士山ともご縁があります。

また江の島には、富士山とは関係なく、信仰の島としての伝説がたくさんあり、そのひとつを描いたのが次の絵です。

これは「北条時政が江の島の岩屋でお祈りしたら弁天様が現れた」というお話が下敷きです。

幕末~明治期の浮世絵の巨匠、月岡芳年の作品(明治16年:1883年)ですが、はじける波や弁天様の衣の動きが、何となく漫画風というかアニメ風…。
漫画のルーツは「鳥獣戯画」だとよくいわれますが、直接のルーツは間違いなく浮世絵だよねと思わせる、印象深い作品です。

④「企画展示コーナー」

企画展示のテーマは、「江の島から富士山へ」。
こちらは伝説ではなく、富士山や江の島に詣でに出かける街道筋としての藤沢の風景が集まってました。

行列をなして富士山を登る絵からは、いかにたくさんの人が藤沢を通って「富士詣で」に出かけたか、楽しそうに浜辺を歩く女性の旅人からは、いかに江の島が身近な行楽地だったかがよく分かります。

また、日蓮聖人の浮世絵からは、どんなに江の島が霊験あらたかな場所だったかも。

これは、先ほどの芳年のお師匠さんの歌川国芳が、天保6年(1835年)頃描いた浮世絵で、日蓮聖人が滝ノ口で処刑されそうになったとき、江の島方面から光が差して助かったという場面です。

国芳といえば、天保の改革の風刺画「源頼光公館土蜘作妖怪図(※)」を描いた人。
江戸期の人気絵師のひとりで、「奇想の絵師」と呼ばれるユニークな作風は、弟子の芳年よりさらに奔放で漫画チックかもしれません。

(※)読み方:ミナモトライコウ ヤカタ ツチグモ ヨウカイヲ ナス ズ

小さいけれど資料がぎっしり!ミニライブラリー

浮世絵を十分楽しんで展示室を抜けると、右手にミニライブラリーがあります。
浮世絵に関する本や、画集や歴史書、解説書などがぎっしり並んでいて、これを全部読もうとしたら、何年もかかりそうな充実ぶりです。
貸し出しこそしていませんが、そばに大きなテーブルがあり、ゆっくり本を読むことができます。

テーブルで飲食はできませんが、子ども向けに漫画の「日本の歴史」なども置いてあるので、お子さんと一緒に楽しむこともできますよ。

(3)イベントがある時に使われる多目的室

展示室の外、受付の隣の部屋が多目的室です。
展示会ごとに開かれる講座やワークショップがおこなわれる場所で、普段は開いていないようでした。

代わりに、展示室やミニライブラリーの向かいのスペースに、日曜日の午後だけのお楽しみ、浮世絵刷り体験コーナーがありました。
ちっちゃい子がとても楽しそうに体験していたので、私もトライしてみることに。

たった2色のシンプルな版画ですが、多色刷りは初めての経験でドキドキです。
そして学芸員さんの丁寧なご指導のもと、できあがったのがこちらのメロンかき氷。

色が薄いし、版もズレていますが、それでも味わいのあるステキな版画ができました。
バレンの正しい使い方や、刷りのコツ、ぼかしの技などを教わって、とても楽しいひとときでした。

刷り上がったあとは、ライブラリー横の「浮世絵ができるまで」のパネルコーナーへ。
実際に刷ったあとに読むと、浮世絵作りの手順がしっくり体に入ってきました。

最後はミュージアムショップでお土産選び

さて、美術館帰りのお楽しみといったら、ミュージアムショップでしょう。
欲しいグッズが見つかったら、お買い物は事務所兼受付でします。

絵葉書やサコッシュ、クリアファイルやメモ帳など種類がたくさんあって迷いましたが、私は定番の図録(1,000円)と気になっていた双六(250円)を買いました。

双六は、かわいい絵のコマと、サイコロ、遊び方の解説書付きです。
途中で1が出ると脇道に名所見物にでかけたり、関所に止まると振り出しへ戻ったり、
絵の面白さもプラスして、大のおとながワイワイ盛り上がって遊びました。

現在の「江の島浮世絵と富士山 伝説の宝庫~藤沢・江の島~」展は9月3日(日)までです。
1週間の入れ換え休館ののち、次回「アナザー東海道 東海道の多様と異様な描き方」展は9月12日(火)から。
膨大なコレクションの中から選び抜いた浮世絵を、きっとまた面白い切り口で紹介してくれるでしょう。

藤沢市藤澤浮世絵館
住所  :神奈川県藤沢市辻堂神台二丁目2番2号ココテラス湘南7階
アクセス:JR東海道線「辻堂駅」北口より徒歩約5分
神奈川中央交通バス:「神台公園前」下車すぐ
駐車場なし
入館料 :無料
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日 :月曜日(祝日、振替休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
※展示替え等のため臨時休館する日があります。お出かけの際は、HP等でご確認下さい。
TEL:0466-33-0111
FAX:0466-30-1817
X(Twitter):@fujisawa_ukiyoe
Email:fj-ukiyoe@city.fujisawa.lg.jp
HP :https://fujisawa-ukiyoekan.net/

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